星の名前、花の名前

一昨日の深夜のことです。

ずっと書き続けていた原稿がひと段落したので、
今日はこれまで…と冷蔵庫のドアを開けると、なんと! ビールの買い置きがありません
しょうがねーなとコンビニに向かい、冷えっ冷えの缶ビールを買って帰る道々で、
ふと見上げると、月が出ていました。

三日月…というには少々ふくよかな月のすぐ近くに、
ひときわ明るく光る星がふたつ輝いています。
東京近郊の空気の悪さをものともせずに、キラキラと光を投げています。
木星と金星……かな? おそらくそうでしょう。
金星の近くにはさらに暗い、小さな星がいくつか見えます。
たぶん双子座ですね。空気のきれいな場所ならば、
もっともっと明るく見えることでしょう。

実は私、小学生の頃は大の天文ファンでして、
星座や星の名前を一生懸命に覚えたものでした。
でも、そんな記憶も今はすっかりおぼろげになってしまいました。
どんよりと沈んだ夜空に見えるかすかな光をつなぎ合わせては
「あれは……○○座かなぁ?」程度が関の山です。

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私の自宅の近所にある居酒屋さんは、ご夫婦で切り盛りするお店なのですが
店先に、申し訳程度の花壇をしつらえてあるのです。
コンクリートできちんとつくったものではあるのですが、
スペースでいえば、ベランダのプランター菜園よりも少々広い、という程度です。

ところがこのささやかな花壇には、一年を通して、いつも何かしらの花が咲いています。
ことに春から夏、秋にかけて、さまざまな花々が、実に見事に咲き誇ります。
かなり丹精しなくては、ここまで見事な花はつくれません。素人目にも判ります。
ときおり、店のご亭主が花壇にうずくまって世話をしている姿を見かけます。
見た目はゴツく、非常にコワモテなご亭主なのですが、
さぞかし神経の細やかな方なのでしょう。

ですが花壇に咲き誇る花々の姿に見とれ、その芳香にうっとりとしつつも、
私にはその花の名前すら判りません。

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星の名前や花の名前を知らなくたって、別に何も困ることはない……
確かにそうでしょう。
ですが、こうした「何の役にも立たないあれこれ」こそが、生きる時間の幅を広げてくれます。
その人に奥行きとふくらみを与えてくれます。
その人ならではの魅力を、引き立ててくれます。

人生において「無くても良いもの」は時として「無駄」であり、
また時として「遊び」であり「余裕」でもあります。

効率化とか費用対効果とかの言葉に辟易してしまったら、
「何の役にも立たない」星々や花々に気持ちを向けてみるのも良いかもしれません。
遠い空の星一つ、路傍に咲く花ひとつにも、
それぞれに深いドラマがあったりするものですよ。

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