突然ですけれども、皆さん「3秒ルール」ってご存じですか?
地域によっては「5秒ルール」というのもあるらしいのですが、
秒数が違うだけで、内容はまったく同じものです。
子どもの頃に、おやつのお菓子とかパンとかを食べているとき、
うっかり落としてしまうことがありますよね。
で、たとえ床に落としても3秒以内に拾い上げれば、
「大丈夫、汚くないから、そのまま食べても平気」というルールです。
「5秒ルール」は、若干時間が長いバージョンです。
実は私がこのルールを知ったのは、もはや子どもとはいえない年齢になってからでした。
確か、バイト先の仲間から聞いたんじゃなかったかなぁ…。
初めて聞いたときは「何じゃそりゃ?」と思いましたが、
その後、このルールを思い出すたび、いろいろな人に聞いてみたところ、
ほとんどの人が知っているのです。もちろん「3秒」と「5秒」の違いはありましたが。
……そうか。周りの人たちはそういうルールのもとに、生活していたのか。
だとするとさしずめ自分は「無制限ルール」だなぁ…。
なにしろ駄菓子屋で買った黒棒(私たちは「黒パン」と呼んでいましたが)を、
公園の地面に落っことしたところで、カウントなんてしません。
悠々と拾い上げ、申し訳程度にサッサッと砂を払って、ガブリと豪快にかじりつきます。
飴玉なんぞを砂場に落としても、水道の水できれいに洗えば万事OKです。
周りの友だちもみな、同じように振る舞っていました。
今から思うと、その剛胆さ男らしさに我ながら感嘆しますが、
反面、衛生観念は皆無であったと言えましょう。
さすがに大人になると、それがいかにヤヴァイか解ってきます。
幸いに日本では上下水道や浄水施設がガチガチに整備されていますし、
70年代あたりの企業による環境汚染の反省と改善もあって、
今や世界的にもトップレベルの公衆衛生が保たれていると聞きます。
衛生インフラを整えることで、感染症などの危険を極力回避しているわけです。
にもかかわらず。
精神衛生面ではどうかというと、まだまだまだまだ低いままです。
精神を健康に保つにはどんな環境が良いか、どんな生活スタイルが望ましいのか。
法制度やインフラを整える必要があるのか、だとしたら何が入り用なのか。
国民が等しく共用できる「精神の健康を保つメソッド」でも作るべきではないか。
あるいは現行の定期検診に、精神衛生の要素も含めたほうが良いのではないか。
…そうした議論がどの程度行われているのかさえ、私たちの多くは知らずにいます。
政府、行政、民間企業のある部分には、
こうした問題に真摯に取り組んでいる方々も多くおられることでしょう。
ですがそれは、まだ一般に充分に啓蒙普及できているとはいえません。
近年になってようやく「ハラスメント」なんてものが脚光を浴びてきましたが、
これもセクハラやらパワハラやらマタハラやら何やらと、
真剣な議論がされている一方で、どうも流行り言葉のように扱われている感もあります。
これが地に足のついた概念として浸透し、
効果的な対応が一般的にとられるようになるまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。
…ひとつの概念や考え方というものを広く浸透させるには、時間がかかるものです。
近年、ようやく世間に定着した「クールビズ」ですら、
その原案が提唱されたのは、もう30年から昔のことです。
当時は「省エネルック」と言ってまして…若い方はぜひ、画像をググってください。
ともあれ、精神の健康を保つ環境が整うまでに時間がかかるとなれば、
それまでは自分自身が気をつけるしかありません。
精神の健康を損なわないような「衛生観念」を、まず自分が身につけることです。
企業の管理職や経営者さんは、自分はもちろん部下や社員の精神衛生のためにも
同じく衛生観念を知り、現場で活かしていくべきでしょう。
医師や学者といった専門家の方々は、それなりの知見と経験、
さらには「専門家」という肩書をフルに使って、
企業や行政にどんどん提案していただければありがたいです。
精神疾患はまだまだ不明な点が多く、それだけに実効的な対策を作りにくいものかもしれません。
といって何もしないでいては、患者数は増えていくばかり。
本人にとっては地獄の苦しみですし、社会にとっても大きな損失です。
まずは始められるところから、できることを着実にやっていくことが
すべての人々の「精神の足腰」をしっかりとさせることにつながるのでは、と思います。
ひとたびダメージを受けた精神は、手品みたいに3秒や5秒では治りませんし、
無制限に放っておいたら、治るどころか悪化していくばかりなのですから。
…なんか、ずいぶん大それたことを書いてますねえ。
長文にて失礼しました。