うつでバリバリの頃の私は、まさに「いい人でいたい症候群」でした。
自分のことは二の次三の次で、周りの人たちが気分良く、気持ち良く過ごせるために
何をするかというようなことばかりを、考えていたように思います。
具体的な話は長くなりますし、また本にも書いたことですので省略しますが、
当時の私は「自分」よりも、周りの人たちの意識や気分を優先していたのです。
そのためには、自分を抑え、歪め、封じ込めることも厭いませんでした。
そんなことを日常的に続けたあげくに、うつを発症してしまった……まぁ、
それだけが原因だったわけではもちろんありませんが、
この習癖が私のうつ発症を大いに加速したことは、間違いないと思っています。
しかしなぜ、私はそれほどまでに「いい人」でいたかったのでしょうか。
その理由は、あれこれ挙げられるかもしれません。
ですが大きな理由は二つです。
ひとつは「他人に嫌われるのが怖かった」こと。
もうひとつは「怒りの感情を抱くのが怖かった」こと。
いずれも、何かを恐れる「恐怖心」がベースにあって、
それを回避したいがために「いい人」でいたいと願っていたのです。
ひとつめの理由である「嫌われたくない」という心理。
これは意識するしないに拘わらず、多くの人が持っているものでしょう。
おそらくは異性にモテたいがために自分を飾る、生物本来の習性が
人間社会というコミュニティの中で形を変えて表れたものだと思いますが…。
まぁ、そんな面倒な理屈は置いておきましょう。
その根源はどうあれ、この習性は度を過ぎると
時に自分自身を傷つけることにつながっていきます。
なにせ周りの人から嫌われないためだったら、自分を曲げるなんてのは朝飯前です。
自分自身が「どうしたいか」ということよりも、
どうすれば目の前にいる人を楽しませられるかという、そこが発想の原点になります。
そこにはすでに「私」はいません。
相手に迎合することを良しとする人格があるばかりです。
自分のことはどうでもいい、とにかく嫌われたくない…。
これがすべての発想と行動の原点になってしまうのです。
今から思えば、うつを発症するかなり前から、
私にはこうした習性が身についてしまっていました。
なぜなのか。
端的な言い方をしてしまえば、とにかく「自信がなかった」のでしょう。
当時の私はは就労環境に大きな変化があり、
また未経験の業務も手がけるようになっていましたし、
周りにいるのはみな精鋭ばかりでしたから、その中で萎縮していたのかもしれません。
そのため自分に自信が持てず、周囲に合わせることを第一義に考えるようになり、
「他人様第一」という、偏向した精神状態にまで達してしまったのではないかと思います。
ですがそれはあまりにも不自然で、しかも自分自身に無理を強いる状況でした。
このことは、他のいくつかの要素とともに、
私のうつ発症を加速させた要因の一つだと思っています。
まぁ誰だって、「いい人」でいたいものです。
ですがあなたを「いい人だな」と感じるか、あるいは「イヤな奴だ」と感じるか。
いずれも他人の感じ方次第です。あなたがコントロールできるものではありません。
あなたがどんな努力をしようとも、あなたが「いい人」になるかどうかは他人次第。
そう考えると、別に無理に「いい人」を目指さなくてもいいんじゃないか、と思うのですが、
どうでしょう?