もう何年前になるでしょうか。
うつの最悪期からなんとか這い出し、
それまでまったく全滅状態だった仕事に復帰しようと、
従前の取引先へのご挨拶や新たな得意先獲得に
動き始めた頃のことです。
私の古いお得意さんである、小さな出版社の社長を訪れました。
この社長は、私が今の仕事を始めたときに
一から十まで教えてくださった方で、私にとっては恩ある方です。
私の病気のことはすべてお話ししていましたから、
「元気になって良かった」と、わがことのように喜んでくれました。
そして快気祝いに…と、小さなお仕事をひとつ、いただきました。
本当にありがたい限りです。
後日、そのお仕事の資料一式が宅配便で届いたのですが、
その中に、この仕事とはまったく関係のない、一篇の詩がまぎれ込んでいました。
詩といってもそれは、本か雑誌の書評か何かのページを、
A4サイズでコピーしただけのものです。
「何だこりゃ?」と思いましたが、その詩を読んで、私は深くうなずきました。
いま思い返すと、うつの前後はまさにこの詩の通りだったな…と感じます。
その一枚のコピーを資料の合間に挟んだのは、
おそらくは、あの照れ屋の社長の心遣いだったのでしょう。
…人は生きているのではなく、生かされている。
うつを経験してからなおさら、そうした思いを強くします。
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うつを患っている最中は、周りのことも、将来のことも、
希望的に考えることができません。
ある日突然やって来た「うつ」というトラブルに翻弄され、
自分の将来には不幸と絶望だけしかない、という感覚にとらわれがちです。
でもそれは、うつがあなたの脳内に映し出す幻影です。
根拠のない虚像であり、ペテンなのです。
ドラム缶の中に押し込められたような気分でいたとしても
そこには実は、いくつもの出口があり
いくつもの選択肢が用意されているのです。
それが今は、見えていないだけなのです。
うつは必ず治りますし、あなたは必ず元気になれます。
今までとは違う環境かもしれませんが、それも良いじゃないですか?
新たなステージで新たなスタートを切るチャンスは
いくらでもあるんだ、ということは、知っておいてほしいと思います。
↓詩人の島田陽子さんという方の詩です。
↓同名の女優さんとは別人物ですのでご注意を。
↓
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滝は 滝になりたくてなったのではない
落ちなければならないことなど
崖っぷちに来るまで 知らなかったのだ
しかし、
まっさかさまに
落ちて 落ちて 落ちて
たたきつけられた奈落に
思いがけない平安が待っていた
新しい旅も用意されていた
岩を縫って 川は再び走りはじめる