キリンの首はなぜ、あんなに長いのか。
これはもう、子どもの頃からの疑問でした。
なんであんなに長いんだ、キリンの首。
しかもあんなに長いのに、首の骨の数は7つ、
ほとんどの哺乳類と同じ。
どうしてあんなに長くなったんだ。
幼い私は、ここから妄想の世界へと没入しました。
おそらくは、キリンさんも元々は馬くらいの首の長さだったのでしょう。
ですが彼らは他の動物たちと比べて、ちょっと遠慮がちというか、
引っ込み思案だったのかもしれません。
「オラオラオラぁ!!」と、自分が生きるために他者を押しのけて
そこまでしてまで、前へ出て行くタイプではなかったのかもしれません。
そのために、エサとなる葉っぱを他の動物に食べ尽くされてしまって、
いつもお腹を空かせていたのかもしれません。
乾いたサバンナの中、わずかに残った他の動物の食べ残しの葉っぱとか、
あるいは足元に生えている小さな草とかを、
お釜の底をしゃもじでこそげ取るように食べたあとで、
キリンさんは頭上を見上げて思ったことでしょう。
「ああ、あの高い木に茂っている若葉を食べることができたらなぁ」
こうした願望が募りに募り、それが体にも作用して
いつしかキリンさんの首の骨は代を重ねるごとに長くなっていき、
ついには、べらぼうに長い首を持つに至ったのではあるまいか。
これが、私が子どもの頃に考えた「キリンの首が長い理由」でありました。
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自分を変える。
今以上の先を目指すためのビジネススクールや
自己啓発セミナーなどで、よく使われている言葉のようです。
今の自分をより理想に近い姿に変えることができれば、
それはあらゆる点で好都合ですし、ものごとがうまく運びもするでしょう。
ですが「自分を変える」ことは、おそらく容易ではありません。
それができる人は良いですが、できない人も少なくないでしょう。
「自分を変えるって言ったって、そんな簡単にはできないよ」と、
戸惑う人のほうが多数派ではないでしょうか。
私自身は、人は「変える」ものではなく
「変わる」ものだと思っています。
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私は、うつを経験する前後の自分を比較したとき、「変わったな」と思います。
以前は、すべての人たちに好かれたいと願って、自分を演じ続けていました。
頼まれごとを断ることができず、そのために無理な背伸びを繰り返していました。
いろいろなことを心配して、不安を感じ、それを取り除くことができずにいました。
今は、そうしたことはまったくありません。
ですが私は自分を「変えよう」と思ったことはありません。
いつの間にか「変わっていた」というのが実感です。
ただその過程では、いろいろな疑問に向き合ってきました。
どうして俺は「嫌われたくない」のだろう?
なぜ「断る」ということができないのか?
「うつ」というのは恥ずかしくて悪いことなのか?
なぜ、逃げてはいけないのか?
こうした疑問に向き合って答を探っていく中で、
いろいろなことに気づくことができました。
「なぁんだ、そうだったのか!」と。
その繰り返しが、私自身を変えていったのだと思います。
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サバンナのキリンさんのように、「こうなりたい」と願い続けて
そのために何が必要なのか、あるいはなぜその目標に近づけずにいるのか
何となくでも考え続けていると、きっとどこかで答えが見つかります。
それはあなたにとって、意外な答えかもしれません。
ですがその答えを見つけ、「これで良いんだな」と気づくことができれば
それは大きな前進です。
その繰り返しを重ねていくうち、あなたはいつの間にか「変わっている」はずです。
もちろん、自分自身が望んでいた方向に。
焦ることなんか、これっぽっちもありません。
方向を見誤らず、「こうなりたい」という気持ちだけ持っていれば
人は勝手に変わっていき、目標に近づいていくものです。