前回の話で、すでに私の言わんとしていることをくみ取ってくれた人もいるかもしれません。
「船と錨の話」は、心理的な葛藤が生まれるメカニズム、
そしてそれがストレスという名の心理的負荷になるかどうかの境界線が
どのようにして決定されるかということを、
私が頭の中で勝手にイメージしたものなのですが、
詳細についてひとつずつ、説明していきましょう。
まず「錨の形」。これはその人が持っている「内的要因」のうち、
心的傾向を表します。
なんか難しい言い回しを使っていますが、気にしないでください。
要するに「何に強くて何に弱いか」という、心の傾向を表しています。
そしてこれは、海底の状態という「外的要因」とセットで考えるべきものです。
たとえば。
ロープの先に結びつけられた錨が「バールのようなもの」であった場合。
海底が砂地であれば、特に問題はありません。
バールにヒモをくくりつけ、砂浜を引きずって歩くようなもので、
さして抵抗になるわけでもありません。
ですが、海底がゴツゴツした岩場だったらどうでしょう?
鈎状に曲がったバールの先端が岩にガキッと食いついてしまい、
そのとたんに船はピクリとも動けなくなってしまいます。
つまり「バールのような錨」を「内的要因」として持っている船は、
海底が砂地であれば問題なく航行できますが、
それが岩場であったりすると、航行不能になる危険が高いというわけです。
また「お盆のような円盤状の錨」をぶら下げている船の場合、
海底が岩場であっても、さして問題にはなりません。
岩と岩との間を、そのお盆状の錨はボワンボワンと跳ねていき、
大した抵抗も負荷も受けずに済みます。
その代わり、海底が砂地である場合には、
平たいお盆状の錨は砂の海底にべったりと接地して多きな負荷がかかるうえ、
さらに引っ張ろうとすると砂にもぐり込むようにしてより大きな抵抗となります。
そのため船の進行に大きな支障となってしまうのです。
錨の形と、海底の状態とのマッチングによって、
船がスムーズに航行できるかそうでないか、決まってくるのです。