うつの原因についてはあれこれ言われていますが、私は外部の環境と本人の資質、その二つが複合することで起こると考えています。決して単一の原因だけで発症するものではありません。
で、その二つのうちのひとつ「本人の資質」というのが、「心の生活習慣」というものです。
睡眠不足や運動不足、偏った食生活や乱れた生活サイクル、過度の飲酒や疲労などは、もっぱら体にダメージを与える生活習慣です。こんなことを長年続けていたら、決して体に良くはないということは、今や中学生でもご存じでしょう。
それと同様、外部からの刺激に対する思考パターンや判断、わきおこる感情やそれに対するケアなど、ふだん無意識のうちに(つまり習慣的に)行っているさまざまな精神活動が、本人の精神を蝕むこともあるのです。これは、私がうつを患って得た大きな収穫でした。
では、どのような「心の習慣」がうつを呼びやすいのでしょうか。
…これは細かい話になるとかなりのボリュームがあるのですが、端的に言うと「良い人はうつになりやすい」ということができるでしょう。
ここで言う「良い人」というのは、かなり固定されたステレオタイプです。
人に対する気配りが篤く、また自分のことよりもまず人のことを考えて行動するため、しばしば貧乏くじをひく羽目になります。機転も利き、自分が動くことを厭わないので頼りにされる一方、都合良く使われてしまうことも少なくありません。ですが本人は意に介さず、悠々としている…ように見えます。
ですが、こうした人ほど、うつの危険は高いと私は考えます。
「良い人」ほど、うつになりやすい。
いや、さらに正確に言いますと「良い人であろうとすると、うつの危険が高まる」ということです。
なぜそんなことになるのでしょうか?
それはまた、ぼちぼちとお話ししていくことにいたします。