「朝から飲む」のが当たり前

さて、うつとアルコールの話です。

辛い辛いうつ気分ですが、アルコールを入れて酔っぱらってしまえば、そんなものは一発で解決です。
なんて簡単なんでしょう。薬に頼ることもありませんし、「イヤだイヤだ…」と悶々とすることもありません。しかも缶ビールでも焼酎でもウイスキーでも、手っ取り早く酒を入れてしまえば、すぐにぐっすり眠れます。睡眠導入剤を飲んでも眠りが浅く、夜中にふと目覚めてそれきり眠れなくなってしまう…なんてこともなくなるのです。これは使わない手はありません。

こうして私はあっという間にアルコールに依存していったのですが、楽ができた(ような気がしただけでしたが)のは、最初のふた月くらいでした。そこから先は急速に、酒浸りの害が目に見えて表れるようになってきたのです。

当時の私は缶ビールがほとんどで、夜は焼酎のお湯割りを少々、というところでした。まぁ健康な頃であれば、通常サイズの缶ビールを晩飯の前後で二本。あとは風呂のあと、寝る前に本を読んだりネットをうろついたりしつつ、焼酎やウイスキーのお湯割りを二杯程度でした。
ところがうつを患ってから、この酒量が目に見えて増えていくのです。
当時はまだうつの診断を受ける前で、当然、毎日勤めには出ていました。ところが職場である製作会社はごく小規模なものでしたし、スタッフはみな若く、しかも酒好きが揃っていましたから、だいたい夕方6時くらいになると、誰からともなく缶ビールを開けにかかるのです。
そろそろ仕事がひと段落してくる頃合いを見計らったかのように、オフィスのどこかで「バシュッ」と、あの麗しきサウンドが響いてまいります。そうなると、もういけません。飲んべえどもが三々五々集まりだし、やがて酒盛りが始まってしまいます。
そして私はといえば、その飲んべえの輪の中心で旗を振るがごとき飲みっぷりを発揮していたものです。

毎日が、この有り様でした。やがてますます調子が悪くなり、自分自身でも精神の異常を疑うようになり、精神科でうつの診断を受けて自宅での療養生活が始まる頃には、すでに私の体は酒によってボロボロになっておりました。
それでもなお、私は酒を縁を切ることはありませんでした。むしろ家に籠もっていることを幸いに、「朝、目覚めたら缶ビール」という生活に墜ちていくことになったのです。

その頃にはもう、「酒を飲みたい」とも、飲んで「旨い」とも感じることはありません。ただ習慣のように酒に手を出し、惰性のままに飲み続け、吐き気や食欲不振、胃の痛みに苦しむばかりだったのです。

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