うつは心の生活習慣病-08

このところ、ずいぶんと陽が暖かくなってきました。
私の住む地方では桜もずいぶんと花開き、
今週末あたりはさぞかし花見日和だろうと思われます。
穏やかな陽だまりに寝転んで、
満開の桜の枝が風に揺れる風情を楽しむというのは
やはり心地よいものです。

さて、前回お話しした私の「自問自答のプロセス」
すでにずいぶんと前のできごとではありますが、
その時の思考の流れを思い出しつつ、
できるだけリアルにご紹介しておきましょう。
東京近郊の私鉄の車内で、外の景色をボンヤリ眺めつつ
たどっていった思考の流れです。

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穏やかな景色だな…。
俺もようやくまともになれたなぁ。
再発は心配だけど、今からそんな心配しても仕方ないし。
当分は、仕事ものんびりモードがいいかな。

それにしても俺、どうしてうつになんかなったんだろうな。
…まぁ、やっぱり環境だよな。
やんなきゃいけない仕事があんなにあって、
しかもほとんどはタダ働きだし。
それに◎◎(会社の上司です)の扱いが酷すぎたよな。
あいつは俺を、いったい何だと思ってたんだろう。酷すぎる。

でも待てよ、そんな環境に、俺、どうしてしがみついていたんだろ?
そもそも俺はフリーランスなんだし、辞めたいと思ってたなら
辞めれば良かったのに、どうして辞めなかったんだろう?

そこそこ貯金はあったんだから、別に会社を辞めたからって
すぐに生活に困るってわけでもなかったし。
なんで俺、「辞めよう」って方向に考えが向かなかったんだろ?

そうか、「辞める」=「逃げる」だったんだな、俺の中では。
そりゃあ、大の男が尻尾巻いて逃げるのはみっともないもんな。

…みっともない?
みっともないから逃げなかったの?
いや、そんな見た目を気にしてたわけじゃないよな。
でもどっちにしても、逃げるってのは良くないことだよな。

…でも本当にそうか?
逃げるってのは悪いことなのか?
悪いことで、やっちゃいけないことなのか?

そんなことねえよな。
「突撃ばかりで退くことを知らぬ」ってのは、決して褒め言葉じゃないしな。
ドラクエとかFFとかでも「にげる」コマンドはあるしな。
逃げるってのは、必要な戦略だよな。

その辺の野良猫とか鳩とかだって、人が近づけば逃げるじゃないか。
ウサギなんか、それこそ脱兎の如く逃げるっていうし、
サバンナの草食動物なんか、とにかく逃げて逃げて逃げまくって、
それが生きるための戦略になってるじゃないか。

そうか、逃げるってことは悪いことでも、ダメなことでもないんだ。

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ここから先は、「そんな大事な『逃げる』という戦略を、
俺はどうして忌み嫌っていたんだろう?」という思考につながるのですが
それはまた別の話になりますので割愛します。

ともあれ、私のうつの直接の原因は「就労環境からのストレス」だったのですが
そのストレスを生み出したのは
「過剰なまでの他者への配慮」という私の「心の生活習慣」であり、
また発生したストレスを回避できなかった(というよりしなかった)のは
「逃げることは悪いことだ」という私の「特定の価値観」であり、
しかもその価値観から離れることができずにいた
「硬直した思考」であることに、私は気づいたのです。

これ以降、私はより多くのことを自分自身に問いかけ、答えを引き出していきました。
それは自分自身を解きほぐしていくことであり、
楽しくもあり辛くもある作業ではありましたが、
そうしたプロセスはかなりの効果を上げてくれたと実感しています。

ただ、最後にひとつだけ申し上げておきますが、
今現在重度のうつの症状に悩まされている方は、
この作業は行わないようにしたほうが良いと思います。

うつの状態で自分自身と向き合うことはマイナスの結果にもつながりかねず、
症状をますます重くする危険と背中合わせだからです。

まずはうつの症状を軽くすることが先決です。
くれぐれも医師の助言とともに、専門家の手で各種療法に励まれることをお勧めします。


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