今さら言うのも変なのですが、以下の記事はあくまでも「私見」です。
マンガ「ツレがうつになりまして」が大ヒットしたのは、もう10年から昔のことです。
実話を下敷きにしたこの作品は映画やドラマにもなり、
うつという心の病気が世間に認知される大きなきっかけになりました。
その後、類似の作品も登場し、
テレビや新聞・雑誌などでもうつに関する話題が取り上げられ、
うつについての知識や情報が普及していくかに見えました。
ですがそうした盛り上がりはいつの間にか収束してしまい、
今では「検討するべき話題」「解決するべき課題」として扱われることが
とても少なくなったように思います。
うつ患者は年々増えており、その傾向は改善されるニオイもありません。
ところが少子高齢化が話題になることはあっても、
国民の精神衛生状況が懸念されることはあまり多くはないらしく、
今ではマスコミに取り上げられることさえ、まれのようです。
実も蓋もない言い方をするならば、マスコミにとって「うつ」はすでに賞味期限切れなのです。
どおりで、私の本がてんで売れないわけですな。良い本なのに(自画自賛)。
「ツレうつ」は、あまり深いところまでは斬り込まず、
うつ患者とその家族の生活の日々をなぞるような表現に終始しています。
うつは当時としては今以上に重いテーマだったでしょうし、
それをマンガで「どこまで描くか」については、関係者の方々は知恵を絞ったでしょう。
それでも、当時としては「かなり頑張った」内容だったと思います。
ただその後、「新型うつ」とか「プチうつ」とかの言葉が現れたあたりから、
うつは少しずつネタ的な扱いをされるようになったと思います。
他の精神疾患と同様、うつはまだまだ解明されていない部分が多いと聞きます。
だからこそ、「うつ=怠け病」というような、安易なレッテル貼りに走らないよう、
特に専門家の方々には声を上げていただくべき場面で、
実際に多くの医師や研究者の方々が情報発信をなされたようですが、
そうした努力は残念ながら、あまり実を結ばなかったようです。
「うつ」という言葉そのものは、かなり普及しているはずです。
ですが、病名とともに広がっていくはずの知識や情報というものが、
ほとんど置いてきぼりにされているように、私は感じてしまいます。
せっかく「うつ」が知れ渡ったのに、それがどんな病気なのか、
正確な情報が浸透していない。知られていない。
これでは、うつを取り巻く環境は前時代に逆戻りです。
それ以上に悪いかもしれません。
うつに対する世間一般の知識、情報、認識。
そこから変えていかないと、うつを防ぎ、患者を救済する仕組みは作れません。
行政や企業の努力は必要ですし、そこへの期待も小さくありませんが、
それを許容し、推進するのは一般の人々の理解です。
うつを未然に防ぎ、もしも発症したあとでもダメージを最小限に抑えられるような、
そんな仕組みを構築できれば理想でしょう。
それには公害対策と同様に、企業や行政はもちろんのこと、
一市民の意識改革も必要です。
まずはそこから手を付けないと、うつを取り巻く環境を
一気に改善していくのは難しいのかもしれません。。。