前回の記事では妙に中途半端な終わり方をしてしまいました。
なので今回は、素直に前回からの続きです。
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これは私の実感なんですが、うつというのは、ブレーカーみたいなもんだと思うのです。どのご家庭にもある、あの配電盤の中のブレーカーです。
このブレーカーは、家の中の電気配線に過大な電流が流れると、「バチッ」と落ちてしまいます。そのまま大電流を流し続けていたら配線が焼け、最悪、火が出てしまいますから、それを避けるための安全策というわけです。
私が子どもの頃には、こんな洒落たものはありませんで、「ヒューズ」を使ってました。
家の中のあちこちで電気を使いすぎると、このヒューズが溶けて焼き切れてしまうんですね。家中、いきなり停電です。すると親父が懐中電灯を取り出して、配電盤のあたりでゴソゴソやり、針金状のヒューズを新しく付け替えるんです。その間、家族は手探りでコタツやらテレビやら、あるいは点けっぱなしの明かりや電気スタンドなどの電源を落として回ります。真っ暗な中での作業ですから、簞笥の角に足をぶつけたり、何やら妙なものを踏んづけたり(お気に入りのカウンタックの自走プラモを踏んづけて壊したときは、本当に泣けたものです)するのですが、子どもにとっては、それも楽しい時間だったりします。
やがて親父の作業が終わると、家中が再びパッと明るくなります。そうして「電気を無駄にするんじゃないよ!」などと、オフクロに叱られて終了です。
ヒューズを使っていた頃から時代は下って、今はどこの家でもブレーカーを使っています。で、屋内の配線に過剰な負荷がかかるような大電流が流れると、配線を保護するために、このブレーカーが「バチッ」と落ちてしまいます。もちろんすぐに復帰はできますが、使っていない家電の電源を切るなど、使用電力を減らしてからでないと、同じことの繰り返しです。
このあたり、ヒューズがブレーカーに取って代わったからといって、やることは変わりません。
どうにも電気屋さんの話になってしまっているようですが、私はこれこそ、うつ発症のメカニズムなのではないかと思うのです。
つまり前記事でお話しした、「こうしたい」→「でもできない」→「だけど…」という、思考の無限ループにはまってしまったとき、脳のどこかで「それ以上あれこれ考えると、脳のダメージがでかくなる。もう考えるな!」という、強制終了的な機能が働いているからではないのでしょうか。思考回路のブレーカーが落ちてしまうわけです。脳を保護するために。
実際、うつになって思考能力が落ちてしまうと、「何も考えることができない」という状態になりますし、そこを無理して頑張ってしまうと、それ以上にひどい状態を呼び込むことになります。
このように考えると、あの忌まわしい「うつ気分」という状態も、実は自分自身の脳を守るためのセフティネットなのではないか…。そんなふうにも思えてきます。
そしてそこから抜け出す、うつを治すためにどうするかということも、おのずと見えてくるのではと思うのです。