漢方薬で知られた中国の伝統医療には「症状すなわち治療」という考え方があるそうです。
病気によって表れるいろいろな症状…発熱、頭痛、筋肉や関節の痛み、だるさ、のぼせ、倦怠感や気力の減退、食欲不振、吐き気、下痢……。これらの症状はそれ自体が、すでに治療のための第一歩なのだ、というのです。
(その一例については先日の記事にも書いたので、そちらをご参照くださいませ)
だから少々熱があろうが体がだるかろうが、むやみに薬を飲んで抑え込むのはよろしくない、と知り合いの漢方医の先生が言ってました。さすがに40度近い熱を出したりしていたら話は別だと思いますが、まぁ一理ある話です。
さて、そう考えると、うつで表れるもろもろの症状も、実はうつを「治す」ための作用を持っているのかもしれません。
…こんなことを言うと「何をバカなことを」と笑われそうではあります。
確かに、うつの症状が「治療の第一歩」であるならば、その理屈を押し広げていけば「放っておけば、うつはやがて治る」ということになってしまいます。これは明らかにマチガイだと、私自身も自信を持って断言できます。
それでも私は、うつの症状が治療の一助になっているかもしれない…ということについて、頭から否定することができないのです。病気によって体に表れるもろもろの症状それ自体が、治療的な機能を備えているのであるならば、心に表れる症状も、同じような機能を持っていて不思議ではないし、むしろそのほうが自然だと思えるからです。
また、もしもうつの症状そのものに治療的側面があるとしたら、その症状の「真逆の位置」に、うつの原因があるということが言えるとも思うのです。
たとえば発熱や体のだるさという症状は「免疫力を高め、体に余計は負荷をかけずに体力を温存させる」という方向性を持っています。これはつまり「充分な体力と免疫システムの活躍が必要となるような異物が、体内に侵入してきた」という原因によって起こった結果です。
下痢や嘔吐は「消化系の異物を速やかに排除する」作用を持ちますが、これは『消化管内に、吸収すると危険な異物あるいは毒物が侵入してきた」ことで起こるものです。
ですからうつによってどのような症状が、どんなときに起こるのか。まずそのあたりを明らかにしていくことで、それがどのような治療的機能を持っているか、また発症する原因がどこにあるのかということが、次第に見えてくるのではないかと思うのです。